□ Program Director(PD)
坂田 誠(さかた・まこと)
財団法人高輝度光科学研究センター 客員主任研究員

「量子ビームの可能性」
「量子ビーム」と言う聞きなれない言葉が専門家の間で使われ出してから、まだあまり年月が経っていないように思います。この言葉は、厳密に定義された用語というよりも、その利便性のゆえに定着したものでしょう。残念ながら、一般にはまだ馴染みのない言葉ですが、「量子ビーム」を利用した研究は、例えば、ヘアケア製品の開発に役立っているなど、人々の生活に影響を及ぼす段階にまで進んでいます。
「量子ビーム」をつくり出す装置としては、加速器が一般的です。加速器は、人間の生み出した道具としては、最も精緻なものですが、時としては、1kmを超えるほど極めて大型の装置になってしまいます。それゆえ、人間の英知を注ぐことにより、大きく発展する可能性が非常に高いのです。
現在、「量子ビーム」の基礎基盤技術開発研究を発展させるために、「量子ビーム基盤技術開発プログラム」が進められています。高等教育を受けている人の割合が高い日本における、このような先進的プログラムの推進は、非常に大きな意味を持つでしょう。技術立国を目指す我が国に相応しいプログラムです。その本来の目的である、量子ビーム技術の創生・高度化の進展と、「量子ビーム」に携わる有能な若手人材の育成はもちろんのこと、このようなプログラムを通して、「量子ビーム」の研究開発に少しでも国民の皆様の理解が得られることを願っています。